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技術、読んだ本、いろいろ。

写真を読む夜 vol.35 ゲスト 喜多村みか 渡邊有紀

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「写真を読む夜」に行ってきた。ゲストは喜多村みかさん、渡邊有紀さん。

「TWO SIGHTS PAST」がほんとうに好きで、今回の「写真を読む夜」を楽しみにしていた。 「TWO SIGHTS PAST」はこんな作品。

TWO SIGHTS PASTは、2000年頃より写真家の喜多村みかと渡邊有紀が互いを被写体として写真におさめている作品です。 第一回目となる今回は、2006年のキヤノン写真新世紀展で展示させてもらったものから選びました。約10年前の写真。

写真新世紀のギャラリーで何枚か観れる。

いくつかはcakesで無料で読める、観れる。

フォトブックが買える。

写真を読む夜

写真を読む夜はたまに参加していて、以前は浅田政志さん、森栄喜さんの回に参加した。

山内宏泰さんがいつも上手に話しを引き出している。ゲストとの距離が近くて(1m先くらいにゲストが座っている)、毎回とても面白い。

トーク

印象に残った内容を、思い出しながら書く。

まず、ビールが配られた。「写真を読む夜」は代官山蔦屋の北村写真機店で開催されている。普通のお店なので、ちょっとびっくり。飲みながらじゃないと話せないってことで、お二人はワインを飲んでた。楽しい。

この対談記事(有料)で、書かれていることもけっこう話されていた。記事ではなく、直接聞くことができてよかった。記事に書いてあるような内容は割愛する。

TWO SIGHTS PAST

お二人は同じ大学(東京工芸大学芸術学部写真学科)の同級生だった。学生時代にみかさんはいろいろな人を撮っていたけど、有紀さんは限られた人しか撮っていなかった。有紀さんは研究室の発表でみかさんの写真だけで作品を作った。観てみたい。

みかさんは、コンパクトカメラから中判を使うようになって、撮る時にちょっとタイムラグがあって、その一瞬に考えて画を作ってしまっていた時期があったそう。有紀さんは意識的に画を作ることあまりないそうで、有紀さんののほうが得意だと思う、とお話されていた。

写真新世紀で優秀賞を取って、撮られた作品が発表されるからちょっと身構えるようになってしまったそう。作品を続けていく上で、お互いに相手の嫌がる写真は使わないし、泣いてるところ撮らない。極論すれば、いま隣で相手がぱたっと死んだしたら、その姿は撮らない。

ハンガリーの展示の図録や、写真新世紀に出した作品(同じものではなく、あとで作り直したもの)を持ってきてくださっていた。ぱらぱらと観たけど、もっとじっくり観たい。

トークの最中、「TWO SIGHTS PAST」の感想を聞かれた。「TWO SIGHTS PAST」は違う場所で撮った写真、ばらばらの時期に撮った写真が並んでいたり、特にストーリーを作っているわけではない。そういう作品を観る人はどんな風に感じるのだろう、というような文脈だったと思う。

「TWO SIGHTS PAST」を知って、もっと観たくなってcakesの有料会員になった。1年位前に知って観始めたので、そのころにはもう100回くらい連載が続いていた。まずは量に圧倒された。続きが気になって、どんどん観てしまった。そこにストーリーはないけど、続きはありそうな気がした。

といったようなことを答えた気がする。たぶん。

ほんの一瞬で考えた内容だけど、「そこにストーリーはないけど、続きはありそうな気がした」という文章は、感じていたことをうまく言語化できたと思う。

Einmal ist Keinmal

みかさんの作品。

タイトルはこんな意味。

―― 偶然なんですね。写真集のタイトルはミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』の中に出て来るフレーズ「Einmal ist Keinmal」(「一度だけおこることは、一度もおこらなかったようなものだ」)からとられていますね。

喜多村 はい。これだと思いました。何かしら通じるところはあると思うのですが、言葉が飛び込んできたという感じでした。いつもあまり題名に意味を与えたくないと思っていて、これはドイツ語だし、パッとみても分からない。気になる人はちゃんと質問してくれるし、題名がなくたって作品を見てもらえればいいと思っていたので。かと言って適当につけたわけじゃないですよ。なんというか、そういう感じにしたかったです。

このインタビュー記事、いろいろなことが書かれていて楽しい。

「Einmal ist Keinmal」は、ぱっと見てなにを撮っているのかよくわからない写真が多い。あるいはなぜこの写真を選んだのかわからない。 「DEEP POOL GUIDE」の写真展に行ったら鳩の写真ががあって、なぜかとても気になった。もちろん鳩が写っているのはわかるんだけど、よくわからない。でも観ちゃう。

トークでみかさんは「そこになにかあると思って撮っている」と話されていた。だからじいっと観ちゃうんだろうなと思った。

あと「少なくとも私は2度みている」という言葉が印象的だった。

あれこれ

思い出してみると、写真新世紀の過去の受賞作を見ていて「TWO SIGHTS PAST」を知った気がする。そこで気になって調べて、cakesの連載を知って、ますます惹かれたんだと思う。加えて、親しい友達が同時期に「TWO SIGHTS PAST」を知って、この写真が好き、とか話し合うのが楽しかった。

cakesの連載では最後に短い文章があって、それもすてき。写真とともに文章が添えられていることで、写真から受ける印象以外のこともあれこれ考えたりする。

ちょうど自分も写真を撮ろうと思っていた時期で、いろいろな写真を観ていた。いろいろな写真家の作品をけっこう観たけど「TWO SIGHTS PAST」は特に好きな作品だった。トークのあと、お二人と直接話すことができてうれしかった。こうやって二人で登壇する機会はほとんどなかったはずで、とても貴重な経験ができた。

写真新世紀の講評にもある通り、これから「TWO SIGHTS PAST」がどう変わっていくのか気になる。

二人とも若いし、お互いを撮り合ってきた期間もまだまだ短いようです。これをあと20年くらい続けてみたら、とてつもなく凄みのある作品になると思います。

みかさん、有紀さんとは同年代なので、自分の変化とともにこの作品の続きを観たい。個人の作品も製作中とのことで、そちらも楽しみ。