文字の食卓
これまでに読んだ書体の本で、いちばんおもしろかった。そして本好きな人に薦めたい。文章や活字が好きなひとなら、この本はとても楽しい1冊になると思う。
何度も読んできた本の、ちょっと違った一面を知ることができる。本を読んで、そこにある書体から漠然と感じていたイメージが、すてきな文章で表現されている。
ちょっと長いけど、目次はこんな感じ。
- ビスケットの文字 石井中ゴシック
- チューインガムの文字 石井細明朝ニュースタイル
- 炊きたてごはんの文字 石井太明朝ニュースタイル
- 氷彫刻の文字 精興社書体
- 肉の文字 ゴナ
- 卵の文字 ナール
- 夜食の文字 石井中明朝ニュースタイル
- スパイスの文字 タイポス
- 缶ドロップスの文字 岩田明朝体
- 湯気の文字 淡古印
- 果実の文字 本蘭明朝
- 発酵する文字 モトヤ明朝
- ゼリーの文字 石井中明朝オールドスタイル
- 機内食の文字 凸版明朝体
- 豆の文字 石井中ゴシック小がな
- アイスクリームの文字 スーボ
- 骨の文字 ゴーシャ
- スープの文字 日活明朝体
- バターの文字 アンチック中見出し
- おべんとうの文字 新聞特太ゴシック
- 微炭酸の文字 石井太明朝オールドスタイル
- 花の文字 リュウミン
- 給食の文字 光村教科書体
- ビタミンの文字 ゴシックMB101
- 蜜の文字 艶かな
- 塩の文字 秀英細明朝体
- キャラメルの文字 石井細明朝体横組み用かな
- 貝の文字 ファニー
- カレーライスの文字 イナブラシュ
- 煙草の文字 アンチック大見出し
- きのこの文字 ツデイ
- ヨーグルトの文字 ナカフリー
- 燭の文字 良寛
- 魚の文字 秀英初号明朝
- こんぺいとうの文字 石井太丸ゴシック
- 滴る文字 A1明朝
- ミントの文字 ボカッシイ
- 満腹の文字 大蘭明朝
- 珈琲の文字 石井太ゴシック
- あとがき
気になった書体
紹介されていた書体で、気になったものについてあれこれ。
チューインガムの文字 石井細明朝ニュースタイル
エルマーのぼうけんと、ダンス・ダンス・ダンス(講談社文庫)は同じ書体なんだって。風の歌を聴け、1973年のピンボール、羊をめぐる冒険、ダンス・ダンス・ダンスの文庫は、すべて石井細明朝ニュースタイル。
キッチンの秀英体明朝は、この書体で育ったという感覚があるけど、石井細明朝ニュースタイルにそれがなかった。でも、いまあらためて眺めてみると、けっこう特徴がある。
氷彫刻の文字 精興社書体
紹介されている本は知らなかったけど、単行本のノルウェイの森で、精興社書体が使われている。ノルウェイの森の書体は、はっきりと印象に残っている。ちょっと線が細くて、文字がきゅっとしている。この書体で書かれたノルウェイの森が好き。
ゼリーの文字 石井中明朝オールドスタイル
山田詠美の「風味絶佳」が紹介されていた。この書体のやわらかさ、太さの変化、なんだかいいな、と思った。ゼリーの文字とあるように、文字から瑞々しさを感じる。
塩の文字 秀英細明朝体
吉本ばなな(いまではよしもとばなな、だけど)の「キッチン」(福武書店)で使われていた書体。この書体ははっきりと記憶に残っている。
宇多田ヒカルの「Deep River」の歌詞カードにも使われているそう。気付かなかった。
秀英体については、こっちでたっぷり書いた。本当にすてきな書体だと思う。
紹介されている書籍で読んだことのある本
紹介されている書籍で読んだことのある本を探してみたら、けっこう多かった。
- ビスケットの文字 石井中ゴシック
- 肉の文字 ゴナ
- 卵の文字 ナール
- すべて悲しき若者たち(フィッツジェラルド)
- 湯気の文字 淡古印
- 果実の文字 本蘭明朝
- 三四郎
- 発酵する文字 モトヤ明朝
- ゼリーの文字 石井中明朝オールドスタイル
- 風味絶佳(夕餉)
- アイスクリームの文字 スーボ
- 骨の文字 ゴーシャ
- バターの文字 アンチック中見出し
- 蜜の文字 艶かな
- すごいよ!!マサルさん
- 塩の文字 秀英細明朝体
- 広辞苑
- キッチン
- Deep River
- 貝の文字 ファニー
- P.S. アイラブユー
- 煙草の文字 アンチック大見出し
- ミントの文字 ボカッシイ
まとめ
本を読むのが好きだった。WebやHTML5に関わるようになって、WebFontsという技術を知って、わくわくした。でも簡単に使えるのは主に欧文書体だった。
それでも日本語WebFontsの技術は進化し、そして源ノ角ゴシックというすてきなフォントがリリースされた。Apache License 2.0というエンジニアには馴染み深い、とてもオープンなライセンスで。
本を通じてずっと書体に触れ合っていたけど、Webを通じて書体の良さや楽しさを知った。本書を読んで、その本にその書体に触れた瞬間を思い出すような、懐かしい気持ちになった。
本が好きというのが原点で、そこから書体やフォントを好きになったので、原点回帰という感じがする。
2014/08/30に、著者の正木香子さんのセミナーがあって行ってきた。とても楽しいセミナーだった。これについてはまた今度書く。
おまけ(告知)
2014/09/27(土)に、フォントもくもく会というイベントをやるので、フォントに興味があって、なにか取り組んでみたいと思っている方は、よかったら参加してください。
内容はこんな感じ。
フォントもくもく会は、少人数でフォントについて調べたり、様々な機能を試したり、情報交換をする会です。セミナー形式ではない、参加者が自主的にする勉強会です。
源ノ角ゴシックというフォントがオープンなライセンスで公開され、Webフォントも広く使われるようになってきました。フォントについて、いろいろなことが試しやすい環境になってきていると思います。
フォントもくもく会で、たとえばこんなことやりたいと思っています。
- 源ノ角ゴシックについて調べたりビルドしてみる
- Webフォントのパフォーマンス計測をする
- OpenTypeについて調べる
- CSS Font Loadingモジュールを使ってみる
- アイコンフォントを作ってみる
フォントについて詳しい必要はありません。WebやDTPといった内容に関わなく、フォントについてなにかしら取り組んでみたいと思っている方と一緒にもくもくしたいと思っています。