さきちゃんたちの夜
内容(「BOOK」データベースより)
失踪した友人を捜す早紀。祖父母秘伝の豆スープを配る咲。双子の兄を事故で亡くした崎の部屋に転がり込んだ、10歳の姪さき…。いま“さきちゃん”たちに訪れた小さな奇跡が、かけがえのないきらめきを放つ。きつい世の中を、前を向いて生きるひとに贈る、よしもとばなな5つの物語。
よしもとばななの「さきちゃんたちの夜」を読了した。最近のよしもとばななの作品、好きだなーと思った。なんとなく。
すごく響くわけじゃないけど、近くがふわっと暖かくなるような物語だった。よしもとばななの書く、食べ物のでてくる話しはほんとうにいい。「さきちゃんたちの夜」の「癒しの豆スープ」がすごく気に入った。
そんな全てを眺めているうちに私は人間が愛おしくなり、そしてこわくなった。
豆スープがほしい、おいしい、嬉しい、ありがとう、よかったらこれ受けとって、そこまではみんな思い至る。
でも、祖母の手がまるでぼろぞうきんみたいにがさがさになって、血が出てばんそうこうをしているのに、それには気づかない。鍋を運んでくる祖父が足を引きずっていても、めったに手伝いはしない。それをなんとも思わないでいられる、あるいは目に入らない、あるいは見て見ぬふりをする、人間の鈍感さ。あるいはずるさ。
「癒しの豆スープ」にこんな文章があった。すっと入ってくる。これだけだとちょっと悲しいけど、最後のほうに、ちょっとほろっとしちゃうくらい、ちゃんと救いがあった。
キッチンの亡くなったおばあちゃんも、こんな感じのひとだったのかもしれない。「満月」みたいに、みんなたまにだれかにかつ丼を届けてほしいことがあるよね、と思った。なにはともあれ、豆スープが飲みたい。
ミネストローネをたまに作るけど、もっとちゃんと作ってみようかなと思った。文章を読んで、これを食べたいと思うことはあるけど、これを作りたいと思うことはあまりなかった。力のある文章というのはすごい。